過労死防止を「国の責務」と明記した初の法律「過労死等防止対策推進法案」が、今国会で成立する公算が大きくなりました。
法案は長時間労働などに対する規制や罰則を定めるのではなく、社会的な損失である過労死や過労自殺をなくすため、国の責任で防止対策を実施するとの理念を明確にするのが目的との事。
法案では国が実施する対策として以下を掲げています。
(1)過労死の実態の調査研究
(2)国民の関心と理解を深めるための啓発
(3)産業医への研修など相談体制の整備
(4)民間団体の活動支
また地方自治体や事業主にも協力を求め、「勤労感謝の日」を含む毎年11月を啓発月間とするようです。
法案では過労死を「業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡や自殺」と定義していますが、過労死の実態には不明な点も多いため、調査研究は定義外のケースも含めて幅広く取り扱っていくようです。
対策については国に大綱の作成を義務付け、過労死遺族や労使の代表をメンバーとして厚生労働省内に設ける「防止対策推進協議会」からの意見を参考にしていきます。
調査研究結果や対策の実施状況を毎年国会へ提出するよう義務付けます。
人事労務面での過労死というと、長時間労働・過重労働からくる精神疾患による自殺や、脳・心臓疾患を原因とする死亡が想像されます。
長時間労働・過重労働が直ちに過労死につながるわけではなく、これらが継続的に続く事により様々な症状を発症し、結果的に死亡に至ってしまうというものです。
原因が一定でないところから、今回の法律でも調査研究を幅広く行っていくとしています。
本法では直接的な規制や罰則は設けないとありますが、過労死防止を国の責任と定義付けるという事は、企業側にも相応の義務を求め、労働行政上も実態調査を行うものと考えます。
今後の具体的な施策を注目する必要がありそうです。
過労死等防止対策推進法案
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/186/pdf/t051850281850.pdf