執筆者
社会保険労務士法人スマイング
コンサルティンググループ マネージャー 薄田 順矢 が執筆しました。
ピープルアナリティクスサービスを展開するトランス社による、会社役員が人事戦略において統計上の事実と異なり、勘や経験に基づく思い込みや、過去の常識にとらわれ、誤った内容を認識していることに関する「HRファクトフルネス調査」によれば、約7割の会社役員が「給料を増やせば退職者は減る」、約7割の会社役員が「従業員との関係性を強めれば退職者は減る」と回答していることが明らかになりました。
ある1000人の組織の若手に対して同社社が行った調査結果によると、「給与を増やした回数が多いほうが、退職率が高い」ことも明らかになっており、「若手の場合、2番手の評価が退職しやすい可能性がある」(最も評価が高く給与が上昇している人は、退職率は低い)ことを示しています。
例えば、組織において最も活躍している人は、「表彰」や「抜擢」をされ、注目されることも多いが、2番手は一定仕事で成果を残しているにも関わらず、注目されないことも多いが、2番手は仕事の能力が高いため、外部からの引き合いも多く、退職率が高まっている可能性があると考えられます。
実際に「給与の増加」と「退職率」を定量的に分析したことがある経営者は1割未満となっており、過去の常識にとらわれ、現状を正確に認識できていない可能性があると言わざるをえず、多くの経営者が間違えた意思決定を行ってしまっているかもしれません。
「従業員との関係性」については、「エンゲージメント」を商材とする企業の調査結果によると、「エンゲージメントスコアの高さと、退職率の低さは相関関係がある」としている調査も少なくないが、102の組織・チームに対し弊社が行った調査結果によると、エンゲージメントスコアが高くても、退職率が低くならないという実例もでています。
この結果は、組織によっては退職理由が、必ずしもエンゲージメントだけではないことを示していると考えられ、エンゲージメントスコアが高くても、「自身の成長・キャリアアップ」のために退職する人も存在するため、エンゲージメントスコアが本当に自社の「退職理由の原因を見極められているか?」を確認しないと、意味のない指標を計測しまっている可能性もあります。
全く関係のない課題を深堀して、施策を導入しても期待する効果は得られにくいでしょう。良かれと思って導入した施策が、社員になかなか受け入れられかったことや、離職率が増加してしまったというご経験のある企業もあるかもしれません。
組織がどういう状態かをきちんと診断し、最適な手法を用いることが必要です。
働きたくなる会社づくりコンサルティング