執筆者
社会保険労務士法人スマイング
コンサルティンググループ マネージャー 薄田 順矢 が執筆しました。
働き方改革ともに、テレワークや短時間正社員など職場のダイバーシティについて取り組む企業がふえていますが、SAPやマイクロソフトなど大手IT企業では、発達障害の人々を採用する「ニューロダイバーシティ」(神経学的な多様化)に向けた取り組みが「障害」ではなく、特殊な能力「異能」として、IT業界を中心に注目されています。
自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ディスレクシア(失読症)など、これらの発達障害を持つ人達は、就学や就職で困難に直面してきたが、実は集中力や「型にはまらない」思考能力に富み、IT業界で能力を発揮する可能性があります。
Specialisterne社のCEOゾンネ氏によれば、自閉症は、他人とのコミュニケーションが苦手であったり、興味や活動が偏るといった特徴になりますが、既定の枠にはまらない発想は、型破りな創造力が必要な現在のテック業界で求められる資質。自閉症の人達は正直で、職務に忠実で、スキルに富んでおり、類まれな集中力、記憶力、細部への注意力、視覚的な思考、論理などに強く、様々な問題に対してユニークな洞察や視点を与えられる潜在力があると述べおります
同氏は、時間をかけて個人のモチベーション、能力、スキルなどを熟知した上で、企業のマネジャーや同僚、人事担当などとともに、彼らが職場で能力を発揮できるような環境整備にも取り組んでいます
文字の読み書きに困難を伴うディスレクシアの方は、既存の枠を超えた思考能力がある他、パターンの理解、可能性の評価、意思決定において平均を上回るパフォーマンスを出すといわれおり、ADHDの方は非常に創造性に富むほか、興味のある分野については、類まれな集中力を発揮すると指摘されています。
世界経済フォーラムでは、「異能」の人材が活躍できる職場環境を整えるために企業が取り組めるアプローチとして、以下の4点を挙げています。
1.フレキシブルな職場:自閉症の人には聴覚的な刺激を防ぐため、ヘッドフォンを用意する。また、ADHDの人には静かな空間を与え、スケジュールをフレキシブルにしたり、予定や会議の議事録を書き留めるようにしたりする。
2.マネジャーや同僚へのトレーニング:意識向上キャンペーンを実施するなど、マネジャーや同僚が発達障害を理解し、一緒に良い仕事ができるようにする。
3.採用の仕方を変える:相手の目を見て話をするのが苦手な自閉症の人などは、システマチックな面接による採用は不利となるため伝統的な面接ではなく、タスクを与えてパフォーマンスを見たり、長時間のリラックスした雰囲気の中で能力を見たりする採用プロセスにする。
4.アドボカシー(唱道)とポリシー:職場で立場の似ている職員のグループを作って、観点を共有する。
ニューロダイバーシティを意識した職場環境は、すべての社員にとってもよい良い職場環境の整備にもつながります。
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