執筆者
社会保険労務士法人スマイング
コンサルティンググループ マネージャー 薄田 順矢 が執筆しました。
被害者や加害者の視点をリアルな描写で実感させて、社員によるパワハラ行為の予防などにつなげるため、仮想現実(VR)を使ったパワーハラスメント対策の研修サービスが増えており、2019年に企業に防止対策を義務付ける女性活躍・ハラスメント規制法が成立しており、対策を強化したい企業のニーズに応えるようとしています。
日本能率協会マネジメントセンター社は9月、高齢者施設を運営するシルバーウッド(千葉県浦安市)とプログラムを共同開発し、VRと議論を組み合わせたハラスメント研修を始め、受講者は職場でハラスメントを受けるVRを疑似体験したうえで、何が問題だったのかなどを話し合うサービスを始めています。
提供開始日に開いた体験会には企業の人事部の社員らが多数集まり「互いに相手の話を聞いていない」「ああいう言い方をしたくなるのも分かる」などと、参加者がVRで体験した状況について感想を述べ合っており、プログラム作成に関わった医師の三宅氏は、企業のコミュニケーションについて「当事者視点がないから失敗する。VRで『一人称』の体験をするのが大事」と強調しています
NTTラーニングシステムズ社も9月、セクハラやパワハラを第三者と被害者の視点で体験するVR映像と視聴用機器を貸し出すサービスを始め、「360度の映像なので、後ろを振り返ると(自分の行為が)ほかの社員にも悪影響を与えている点などが学べる」と述べております。
映像制作のジョリーグッド社は、上司と部下目線のVRでハラスメントを考える研修用映像を作成し、チームワークを高めるため部下を飲みに誘う上司の行動が、威圧感を感じる部下の視点では苦痛となっている状況などを表現しています。
ハラスメント対策に使われる技術はVRだけではなく、行動分析のFRONTEO社AIで、メールの文面から不正の兆候を見つけ出し、「スコアをつけて担当者にアラートを出す」(野崎周作執行役員)。8月にはAIの機能を拡充。同社がハラスメントのサンプルデータをあらかじめ学習させ、顧客が自前で用意しなくても検知できるようにしています。
厚生労働省が10月に公表したパワハラ防止の指針の素案に対して「定義が狭い」といった批判が出ており、明確な「線引き」が難しいなか、企業にとってもハラスメントを考える研修サービスのニーズは高まりそうです。
IT業界の場合、チャットツールによるテキストコミュニケーションが多く、誤解されない表現などについても、ハラスメント研修や対策を講じる企業は増えております。
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