執筆者
社会保険労務士法人スマイング
コンサルティンググループ マネージャー 薄田 順矢 が執筆しました。
デジタル人材の獲得競争は業界や国境を越えて激化しています。
ソニー社は、新入社員の初任給に差をつける取り組みを始め、人工知能(AI)などの先端領域で高い能力を持つ人材については、2019年度から年間給与を最大2割増しとし、院卒の新入社員で約730万円となり、対象は新入社員の5%程度となる見通しです。
ソニー社は、仕事の役割に応じた等級制度を採用しており、これまで入社後1年強は等級なしだったが、優秀な人材には2019年度から、最短で入社3カ月後の7月から等級を与えるよう予定です。
等級のない院卒の新入社員の19年度の年間給与は約600万円の見込み。平均的な社員が2年目に得る等級では約630万円に上がる。優秀な人材にはこの1つ上の等級(約730万円)も含め、最短で入社3カ月後から2つのうちいずれかの等級を与える。
等級制度は定期的に見直し、機動的な昇格や降格を実施し、社員のやる気を引き出すも目論見です。
大手人材サービス会社の調べでは、AIやソフトウエアなどに精通するデジタル人材は、自動車や商社、銀行など幅広い産業からのニーズがあり、転職市場で、AI人材の給与相場は昨年と比べて2割程度上がっています。
大手企業が年功序列を排し、優秀な若手の獲得を目指し、待遇を改善する動きは広がりつつます。
・ファーストリテイリング社:2020年から、新卒の初任給を約2割引き上げ
・LINE社:2020年から高度人材の初年度の最低年俸を約200万円増額
・東芝社:2019年度からAI人材などの雇用制度を新設
・ヤフー社:2018年度に通常より年俸が5割高い高度人材の採用枠を新設
ソニー社はじめ、役割等級制度を採用・検討するIT企業が多くなってきています。
役割等級制度は、会社が付与する役割の大きさに応じ等級を定める制度であり、たとえ能力があっても、その役割を果たしていなければ、評価は受けられないことが特徴であり、逆を言うと、若手社員でも、役割を発揮できれば高い評価を与える制度になります。
日本企業で多くある年功序列型の職能資格制度における課題感や、米国企業で多くあった職務等級制度の運用の煩雑さから鑑みると、成果主義がなじまず、ニーズの高まるAI人材の処遇に対応しやすいというのも、役割等級制度が、近年の日本企業でも導入が進んでいる背景だと分析しております。